誰でも簡単に3Dアニメーション制作ができる?
3Dアニメーションに関係ありそうな論文をあさっている時に,ふと目についた論文を紹介します.
The Line of Action: an Intuitive Interface for Expressive Character Posing
Martin Guay, Marie-Paule Cani, and Remi Ronfard
ACM Transactions on Graphics, Vol. 32, Issue 6, Article No. 205, November 2013.
「身振りの線:表現豊かなキャラクターポージングのための直感的インタフェース」という論文で,2013年のSIGGRAPH Asiaで発表されたものです.内容をすごく簡単に言うと,ユーザが線を1本描いただけで3Dキャラクターをポージングさせてしまうインタフェースを開発した,というもの.すごい.YouTubeにそのインタフェースの動画がアップされていたので引用します.
すごい,ストーリーボードを描く段階でこうやってアニメーションを作ることができたらものすごく時間短縮になりそう.
ここからは論文の中身を紹介します.
(All images from https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-00861503v1/file/LineOfAction.pdf)
背景&目的
手描きアニメータたちは,円や楕円,線などのプリミティブな形を用いてスケッチを簡略化してきました.なかでも身振りの線(LOA = The Line of Action)は,表現豊かなキャラクターを描くためによく使う概念的なツールでした.この線はアニメーション制作の初期の段階で描かれ,体の主要な形を表します.この研究は任意の2Dの身振りの線から3Dキャラクターをポージングさせよう,というのが目的です.これにより,初心者でも簡単に表現豊かなポーズを描くことができ,アニメーション制作にかかる時間と労力を効率的に削ることができる,というわけです.
身振りの線とは
身振りの線の定義はそれを描くアニメータによって異なりますが,この論文ではS字型またはC字型の曲線に制限しています.こうやって制限をすることで,キャラクターのポーズがより美しく,より物理的に理にかなったものになるそう.また,S字型もC字型もどちらも,2次曲線か3次曲線のどちらかに近似することができ,問題を簡略化できるというのも理由の1つです.
ボディーラインの定義
次に,3Dキャラクターの骨格の力学的な木における最長の直線鎖を”ボディーライン”と定義します.1体の3Dキャラクターに10本のボディーラインが定義できるのですが,それについてはまたあとで触れます.利用者が入力した任意の身振りの線と,3Dキャラクターのボディーラインの差を最小にすることでポージングさせる,というのがこの研究の要です.
自動対応付け
しかし,身振りの線からキャラクターのボディーラインを制御するためには,ボディーラインのどの部分が身振りの線のどの部分に対応するかを識別する必要があります.この論文では,身振りの線から一番近いボディーラインの部分を対応付け,曲度が高い部分を優先的にボディーラインの関節に対応づけることで,利用者が意図したポージングをより高い精度で実現しているみたいです.
ボディーラインを”正しく”選択する
上で触れた通り,ボディーラインは1体のキャラクターに10本存在します.頭から左手,頭から左足,頭から右足,頭から右手,左手から左足,左手から右足,左手から右手,左足から右足,右手から左足,右手から右足の10本です.この10本の中から利用者がポージングしたいと意図したボディーラインを正しく選択しなければなりません.この論文では,2つの手法を提案しています.1つ目は利用者が自らボディーラインを選択する,というもの.2つ目は,利用者が入力した身振りの線に従ってボディーラインをポージングさせるときに,必要とするエネルギーが最小のものを選択する,というものです.エネルギーが最小のものが2つ以上あった場合は利用者にとって一番手前のものを選択します.
奥行きのあいまいさ
2Dの線(身振りの線)から3Dのポージングをさせるには奥行きのあいまいさを失くさなければなりません.というのも,1つの2Dの身振りの線に対して複数の3Dのポーズが存在するからです.たとえば,キャラクターの骨格より短い身振りの線を入力した場合,遠くへ移動したと捉えることもできるし,しゃがんでいると捉えることもできます.この問題を解決するために,このインタフェースではカメラを回転させることができます.これにより,利用者は身振りの線を入力する際にカメラを回転させ,意図するボディーラインをより正確にポージングさせることができます.足を曲げているようなポーズをさせる時には,カメラを回転させて体を横から見るような視点へ移動させ足を曲げているような身振りの線を入力すれば良い,と.このように,任意の身振りの線とカメラの回転により,利用者は表現豊かなポーズを自由に作ることができるんですねー.
いやー,すごい.